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東京の悩み、足利の悩み~都会と地方の話し合い~
「まちづくり」「地域活性化」――この言葉は、日本中どの地域でも使われているのではないでしょうか。しかし各地自体の熱心な取り組みに関わらず、いわゆる「成果」が出せているかというと、それは全く別の話。先日、SPOT3への見学のため東京都荒川区からお越しの中里さんと鈴木さんに都内での地域活動について伺いました。
私たち地方在住から見たら栄えている都内でも地域活動は行われている、ということを知る機会になればいいと思い、お二人の活動をご紹介します。
―― 今日は荒川からご来足ありがとうございます。まずはお二人の自己紹介をお願いします。
中里昇吾さん(以下敬称略):京都と大阪の県境にある八幡市というところで生まれました。その後は主に神戸で育ちました。ポートアイランドという人工島があるのですがそこが実家です。
就職と同時に東京に出てきて、最初に働いたのは商社です。そこでパソコンや携帯電話の海外輸出なんかをやっていましたが、仕事をするうちに商品開発に興味が湧いてきて、人が身近で使うサービスを開発する側に回りたいと思って、2005年にネット会社(渋谷のサイバーエージェント)に転職しました。それからはずっとネット関連業界で主にメディア系の仕事をしています。
2012年に株式会社THE STORIESを設立して代表をやってます。THE STORIESの初めての自社サービスがPublishersで、システム開発会社の株式会社ビープラウドさんと共同で企画開発しました。
小学生の子どもが2人います。
鈴木俊さん(以下敬称略):東京都荒川区で生まれ育ちました。小さい頃はボーイスカウトをしていて、大晦日の地元神社のかかり火奉仕や赤い羽の募金などボランティア活動もよくしていました。
学生時代は勉強の傍らNPOの活動もしていました。就職活動支援でエントリーシートの書き方やグループディスカッションの進め方を教えるという活動です。卒業後は情報通信会社に就職。忙しい会社だったため、ほとんど仕事しかしていない生活。そんな中で、人は仕事だけでなく、仕事以外の活動やコミュニティをもつことが充実した人生には大事だと考えるようになりました。
現在は、ネットワークエンジニアとして働きながら、荒川区でコワーキングスペース(編集部注:下町のコワーキングスペース)を運営。イベントをつくったり、地元の会社に共有スペースとして利用してもらうことで地域の交流を図っています。
新しい出会いから生まれた新しい地域誌
―― 中里さんと鈴木さんは以前から一緒に活動されていたんですか?
中里:鈴木さんとはこれまでは全然接点なかったんです。コミュニティカレッジでたまたま同じ地域紙作成チームになったのがきっかけです。
―― コミュニティカレッジ! おもしろそうですね。どなたが主催されているのですか。
中里:荒川区です。
―― コミュニティカレッジではどんなことを学ぶのですか。
中里:コミュニティカレッジは3つのコースに分かれています。私や鈴木さんが所属しているのはクリエイティブコースといって、タウン誌を作ったり地域の情報発信について学ぶコースです。この一年は主に区の行政の役割、課題、歴史や地理、タウン誌を作るための基礎みたいなことの講習をうけていました。
―― 3つもコースがあるなんて本格的ですね。
中里:クリエイティブコースのテーマがそもそも「地域情報誌を作ろう」というものです。実際やっていくうちに、せっかく授業で作っても、その後に誰かが継続して発信していく形にならないと意味が無いと思いました。でも、今更印刷版のコミュニティペーパーで良いんだろうか? と。やっぱりこれから始めるならオンラインをやらないと、本当に地域情報を読んでもらうべき20-40代くらいの世代に読んでもらえないんじゃないの? …と思い始めたのがきっかけです。それで、『あしかがのこと。』を見ていて、ああいう市民メディアは気軽だし視点も大手メディアとは違った身近な視点なのでおもしろいなと、荒川でも同じことができないかなと思い始めました。
それでコミュニティカレッジの会合でちょっとその話しをしたら、鈴木さんがいいですねー、と言ってくれたので、すぐ、それやりましょう! という流れになって、9月にARAKAWA102を創刊しました。
―― 『あしかがのこと。』がきっかけなんですね。うれしいです。
(2013年9月創刊のARAKAWA102)
東京にも悩みはある
―― 荒川区が抱える地域の問題は区民から見てどんなことがありますか。
鈴木:コミュニティカレッジに参加して感じた荒川区が抱えている問題は、区が行う政策やサービスを区民に知ってもらい浸透させていくことができていないことだと思います。コミニティカレッジのような活動の目的は、区民の中からより積極的に区の取り組みを理解し、協力したいという人を集め、区と住民の間を取り持つ人を育てたいのだと思います。
―― 行政の情報をどのように知ってもらうかというのは、足利でも同じ課題ですね。今回、足利へ来て頂き、地方のことをお話しましたが「あ、これは荒川区と似ているな」と思った課題はありましたか。
鈴木:地域活動を盛り上げて行くためコワーキングスペースの運営をしているのですが、人の呼び方を工夫しなければいけないという点で、足利市のSPOT3さんと似ていると考えております。私の運営するコワーキングスペースは都内ではありますが、荒川区南千住という場所で住宅街です。なので、特に目的がない人が足を運ぶ場所ではありません。自分たちで、人が足を運ぶ目的となりえるものを作り出さないといけないのです。地域メディアを併せもつSPOT3さんの取り組みは非常に参考になりました。
その地域に合ったやり方がある
中里:荒川区と足利市の課題点として似ている部分があるかどうかについては、私は具体的には掴みきれていないですが、あえて言うと、行政が地元の魅力をうまく外部に発信できていない点ですかね。県レベルで考えたときに県中央からの関心が薄い地域、という点も似ているように思います。もう1つは、若い人たちが都会に目を向けていて、地元に関心が無い、ということでしょうか。「地域」をステレオタイプに括りがちですが、地域地域それぞれ置かれている環境、産業構造、歴史的な経緯が全く違うので、地域がそれぞれ自分たちに合った地域振興のあり方を自分たち自身で模索する必要がある、それは、その土地に実際に身をおいてみないと分からないんですよね。
ARAKAWA102のこれから
―― ARAKAWA102をどのようなマガジンにしていきたいですか
鈴木:Webマガジンで情報を発信する人とその情報を受取る人が、リアル(現実)でもつながるようになればいいなと考えております。地域に特化した情報発信は、他の情報サイトに比べて互いが近くに住んでいるというのも着目するべき点だと考えています。リアルの場での人のつながりまで創り、地域の交流や活性化など、ネット上で終わるのではなく、リアルに、実質的に、いい影響が及ぼせるメディアになることを目指したいと考えております。
中里:ARAKAWA102を、本当の意味で地元に「楽しく読まれるもの」「次の号が待ち遠しく思ってもらえるもの」に、まずしていきたいですね。そのために、ステークホルダーを徐々に増やしていきたいし、記事のバラエティーも増やして視点もカオスなメディアにしたいです。究極の理想像としては、町の人全員が記者になっている、町の人全員が記事で取り上げられた経験がある、ということかもしれません。 そうやって情報発信をする中で、鈴木さんが言うように、オンラインがリアルをつなげるための起点となればいいと思います。リア充を増やすためのオンライン情報、みたいな感じですね。『あしかがのこと。』と一緒になって、超低コストなのに期待される、地方メディアのモデルケースを作っていきたいですね。従来ケーブルテレビやコミュニティFMが期待されつつ、失敗していった分野ですね。
―― 今日はありがとうございました。ぜひ一緒に新しい地方メディアのモデルケースを作っていきましょう!
※この記事に掲載されている情報は取材当時(2013/10/03)のものです。お気づきの点があれば、「あしかがのこと。」編集部へお問い合わせください。
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山田 雅俊
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