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20141/29

様々な手作りの籠たちが集まる鑁阿寺近くの「籠や」 (足利石畳 お店さんぽシリーズ)


足利の地理に明るくない人は、このお店をすぐには見つけられないかもしれない。そう言ってしまいたくなるほど、「籠や」は足利の石畳に完全に溶け込んでいる。鑁阿寺の東門を出て少し歩いた場所にたたずむ古民家。玄関に置かれた「ひっそり営業中」という小さな立て看板を見つけた人だけが訪れることのできるこのお店では、名前のとおり様々な籠たちが、人々を出迎えてくれる。

取材に訪れた日には室内のここそこに様々な形の籠バッグが置かれていたが、店主の籾山さんいわく、「こんなにたくさん籠があるのは久しぶり」なのだそう。「籠や」の籠はすべて手作り。農閑期の手仕事として冬の間だけ籠を編む編み手もいるので、年間に編むことのできる数は限られており、お店に納品される個数も決して多くない。メインで扱っている籠の材料は山葡萄やくるみ、あけびなどだが、良質の蔓をより丁寧に剪定して作るため、大量生産は最初から「無理」な商品。一方で最近は「いいものを長く使いたい」という人が増えたためか、籠バッグのファンは増えており、ゆえに品切れ状態になることが多いのだ。中には手元に届くまでに4~5年かかる籠がある、と聞けば、その人気のほどがわかるだろうか。

「なぜ籠やさんを開こうと思ったのですか?」という、記者であれば誰もがしそうな質問をしてみると、「その質問にはうまく答えられないんです」という答えが明るい笑い声と共に返ってきた。もともと美術工芸品全般が好きだった籾山さんだが、彼女が持っていた籠バッグについて興味を示す人が一番多かった。そのような状況の中で次第に籠を扱うことが多くなり、だんだんと「籠や」さんになっていったのだそう。「籠や」移転のきっかけとなった現在の古民家との出会いも偶然で、この建物とのご縁のおかげで、より「籠や」らしい空間の演出も可能となった。「好きなことを辞めないで、純粋に続けてきたらいつの間にか共感者が増えてきた。ありがたいです。」とさらりと語る籾山さんだが、籠を見つめる視線には籠への深い愛着がにじみ出ている。

「籠や」の籠を手に持つと、しっとりと手に吸い付くようになじむ。「特別な手入れをしなくてもいい。むしろ、毎日使うことが最高のメンテナンス」という籠は、ときに母子2代で使われることもあるほど丈夫で、デザインも時代や流行に左右されない。鑁阿寺、石畳、そして「籠や」…と訪れた人は、悠久の時の流れを心地よく体感できるのではないだろうか。

籠や 店舗情報

場所籠や
栃木県足利市家富町2312
備考営業時間:12:00~17:00
月曜日定休(臨休あり)
ホームページ

※この記事に掲載されている情報は取材当時(2014/01/29)のものです。お気づきの点があれば、「あしかがのこと。」編集部へお問い合わせください。

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satoko motegi

足利生まれ、足利育ち。坂西地区出身・在住。 大学・社会人時代は神奈川と東京で過ごすも、長女の出産を機に足利に戻り、現在は東京(職場)と足利を行ったり来たりの生活を送る。 二児の母。

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