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足利で世界中の絵本に出会える「ブラティスラヴァ世界絵本原画展」
足利市通二丁目にある足利市立美術館では5月28日まで「ブラティスラヴァ世界絵本原画展―絵本の50年 これまでとこれから―」を開催中です。2015年でちょうど50周年を迎えた原画展を記念して、日本から出展された歴代参加作品で絵本の50年を振り返るとともに、絵本の最新動向を紹介しています。「今回は有名どころの絵本と作家さんをずるいくらいにピックアップしているので、ぜひ多くの人に見ていただきたい」と話す学芸員の福島直さんに取材しました。
絵本出版に実績のあった日本も創設から参加 未来に向けた地球規模の原画展
スロヴァキア共和国の首都、ブラティスラヴァで2年おきに開催される「ブラティスラヴァ世界絵本原画展」は第二次世界大戦後の1965年、子供のための芸術を通して世界がひとつのテーブルに着いて意見交換できるような場所を作りたいという思いで創設されました。以来「ブラティスラヴァ世界絵本原画展」は決して商業的ではなく、世界中から子供の本の専門家や作り手たちが自由に集い、経験や情報を交換し合う文化交流の場となっています。
原画の存在しない絵本?グランプリ作品にみる作り手の多様性
ここ10年ほどでデジタル表現を取り入れたパソコンで製作する手法が一般的となり、作り手の多様化が進んできたそうです。今回の展示にある2015年グランプリを受賞した、イギリスのローラ・カーリンの作品がその象徴で、展示にあるのは「原画」というより「素材」。紙を用いて手、足、顔を立体的に工作したものや、顔の描かれたスティックのり、木製洗濯バサミなどの「素材」を使い、その影などを含め写真に撮影。それらをデジタルデータ上で組み合わせたものを絵本にしています。「原画」が存在しないという点で審査員の一部から「今回のグランプリ作品が解せない」と疑問が投げかけられたそうです。
時代と共に移り変わってきた原画の表現や手法
原画展の第一部では日本の歴代作品によって時代の変化とともに表現の移り変わる様子を見ることができます。泥絵具、型染版画、フィルムなど手法が工夫される作品は、作家たちの手仕事への思いを感じます。第二部には2015年、日本からの参加作品と受賞作を展示。グランプリを含むローラ・カーリン他7人の受賞作家については原画以外にも、創作活動を感じられるよう特別展示が設けられていて、デジタルが絵本の表現方法のひとつになってきたことが分かります。
絵本だからこそできる新しいこと
「絵本というのはそもそも、常に新しい技術、手法を取り入れてきた分野でした」と福島さん。もちろん手描きを大切に思う作家は今も多くいます。デジタルを取り入れることで、印刷して絵本にする以外にも様々な表現手段が選べ、今後、絵本原画の多様性がさらに広がります。
以前から実験的に取り入れられてきた手法の延長線上にあるのがデジタル表現であり、手描きの手法が失われることが一概に寂しいというわけではないことを感じてほしいと福島さんは話します。
参考文献 BIB50周年ブラティスラヴァ世界絵本原画展-絵本の50年 これまでとこれから―
日時 | 2017年04月08日 ~ 2017年05月28日 10:00~18:00(入館は17:30分まで) |
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場所 | 足利市立美術館 栃木県足利市通2丁目14-7 |
料金 | 観覧料:一般700円/高校・大学生500円/中学生以下無料 |
備考 | *足利市立図書館の図書館利用カードをご提示の方は2割引になります。 *障害者手帳をお持ちの方は観覧料が免除になります。 *「いきいきパスポート」をお持ちの方、および両毛広域都市圏内にお住まいの65歳以上の方は無料です(住所・年齢を証明できるものをご提示ください)。 *第3日曜日「家庭の日」(4月16日、5月21日)は、中学生以下のお子さまを同伴のご家族は無料となります。 |
※この記事に掲載されている情報は取材当時(2017/04/29)のものです。お気づきの点があれば、「あしかがのこと。」編集部へお問い合わせください。
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田嶋美歩
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