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使い続けることで文化財を後世に残す「アンタレススポーツクラブ」
東武伊勢崎線足利市駅の西側にあるアンタレススポーツクラブ。道路から見える大谷石造りの洋風建築は、足利で絹織物産業が最初の隆盛を迎えた時代に建てられたもので、多くの文化財をもつ足利において、最初に登録された国登録有形文化財の建物です。
日本で現存しているのは足利のみ!
この建物は1902(明治36)年、明治政府による輸出絹織物振興の国策により、足利模範撚糸(※1)合資会社の工場として建てられました。その後「両野工業株式会社」と社名を変更し、1976(昭和51)年まで工場として操業。模範撚糸工場は桐生、米沢、福井、京都、富山、足利の全国6か所に建設されましたが、現在工場の建物が残っているのは、唯一足利のみです。1999(平成11)年11月18日、「国土の歴史的景観に寄与」という登録基準によって登録有形文化財に登録されました。
人々に愛され続ける建物
「登録文化財の活用方法として、珍しいと思います。建築や産業遺産の勉強をしている方が、『写真を撮らせてもらえないか』と、いらっしゃいます」と、アンタレススポーツクラブマネージャーの佐藤聡さんは話します。「昭和60年に山浦社長がここでスポーツクラブをやろうと考えたことは、とても斬新ですごい発想だと思う。他のスポーツジムなどとの差別化も図れる。ただ、石造りの建物なので、冬場は暖房がききにくいのだけが難点です」と佐藤さん。スポーツクラブの利用者からの評価も上々で、年を重ねる度に味が出る建物に愛着を持っている人も少なくないそうです。
旧足利模範撚糸工場の特徴
アンタレススポーツクラブの建物は、2つ連なったノコギリ型の屋根と、半円アーチ付きの縦長窓が特徴。北側の屋根には大きな採光窓があり、雨どいは控え壁(※2)や軒蛇腹(※3)をくり抜いて隠され、外部に見えない構造になっています。国の政策により当時の技術の粋を集めて作られた工場跡は「優れた生産体制等により支えられる両毛地域の絹織物業を物語る近代化産業遺産群」として、2007(平成19)年経済産業省「近代化産業遺産」にも認定されました。
時代を先取り!?足利における文化財活用のパイオニア
「足利における近代化遺産の活用は、アンタレススポーツクラブがはしりです」足利工業大学准教授の福島二朗先生は話します。「元の形のままで残しても、雇用はなかなか生まれない。新しい形で残すことによって、新しい機能がつく。そこを利用する人がいる、そこで働く人がいる。従来の機能とは違う利用をすることで、次の時代に残していける」と福島先生。以前「あしかがのこと。」でご紹介した小俣幼児生活団も文化財を別の機能として利用している一つです。
※1 撚糸:織物に加工する前の糸に「撚り」をかける工程
※2 控え壁:建築構造のひとつ。建物本体を構成する主壁に対して直角方向に突き出した補助的な壁。適切な支柱を持たない屋根の重量によって主壁に生じる横荷重を受け止めて、主壁を支持・補強する役割を果たす。
※3 軒蛇腹:軒近くに設けた蛇腹(装飾)/大辞林 より
参考文献
近代化産業遺産群33/経済産業省
足利市文化財調査報告書第3集/足利市教育委員会
栃木の歴史散歩/栃木県歴史散歩編集委員会
あしかがの登録文化財余禄/長 太三
アンタレススポーツクラブ
場所 | アンタレススポーツクラブ(旧足利模範撚糸工場) 栃木県足利市田中町906-1 |
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備考 | 市の文化財見学ツアーなどに含まれていますが、中を見学することはできません。外からの撮影や見学は自由。 電話:0284-72-8739 営業時間: 月~金曜日 10:00~23:00 土・日・祝祭日 10:00~20:00 休館日:毎月10日及びスクールカレンダー記載日 駐車場:250台 ホームページ:http://www.club-antares.net/club/index.html Facebook:https://www.facebook.com/ashikaga.antares.sportsclub/ |
※この記事に掲載されている情報は取材当時(2017/07/08)のものです。お気づきの点があれば、「あしかがのこと。」編集部へお問い合わせください。
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kitabayashi
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