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足利で唯一「国指定」の天然記念物。手触りをも楽しめる「名草巨石群」
「名草巨石群」はJR足利駅から約14Km北に位置する名草上町にあります。巨岩や奇石が異様な形に積み重なった石の群は、1939年(昭和14年)9月7日に国の指定を受けた足利唯一の「国指定天然記念物」。県立自然公園ハイキングコースのポイントでもあり、隣接する名草弁天(厳島神社)は足利七福神めぐりのひとつです。
天然記念物になった石の成り立ち
長年、足利の自然について研究を続けてきた岡崎龍太郎さんは、「この石はどこからか来たのではなく、ここでできたのです。」と語ります。巨石群付近にある岩石は、花こう岩の大きな塊が外側から風化していき、中心部が残ったものです。マグマが冷え固まるときに体積が減り、ひび割れが生じ、水などが侵入して風化を幾度も繰り返し、長い時間を経て今の様相になったそう。名草巨石群は、花こう岩特有の風化現象を示す代表的なものとして、国指定の天然記念物に指定されました。間近に見て、その手触りを楽しめる天然記念物です。
この場所でできた岩、お供え岩の「胎内くぐり」
巨石群から200m程離れた場所にある厳島神社付近にある「お供え岩」と天然記念物の巨石群の岩石は、もとは直径1.5kmのひとつの岩石だったそう。マグマが地底約1万mで数十万年もの年月をかけて固まり、花こう岩となって、さらにその花こう岩が風化したものです。「お供え岩」には小さな石穴があり、大人がやっとくぐり抜けられるほどのこの穴を通って子宝・安産祈願をする『胎内くぐり』として知られています。
「名草巨石群」に名前の付いた特徴ある石
「名草巨石群」のように、珍しい形あるいは奇怪な形をした大岩が集中して複数ある地形は、一般的に奇石怪石・巨石群」と呼ばれます。花こう岩の割れ目にイロハカエデの根が入り込み、太く育った樹が大きく石を割ってしまった「石割りカエデ」や、「お舟石」、「つづら石」、「鼓石」といった積層する巨石の群。地下深くには、清流が流れているそう。「清流は目には見えませんが、この石の下を流れているのです。」と岡崎さんは説明します。
古代より巨石群の周辺に起こった変化とは
駐車場から、巨石群へ行くまでの切通しの道に見られる杉の木の根が食い込んだ石や岩盤は、花こう岩ができるとき、たい積岩がマグマの熱で焼かれてできた石。「例えば、粘土細工が焼かれると陶器になるように、たい積岩が焼かれて新しい鉱物、岩石になったのです。」と岡崎さんは説明します。今回、お話しいただいた岡崎さんの大学の卒論は「名草巨石群」。およそ60年余り、自然の研究について「唯々好きだから、楽しくてやってきました。」と語ってくれました。
(取材記事執筆:金子有里、デスク:山田雅俊、校正:茂木諭子)
※天然記念物…文化財保護法に基づいて指定された、学術上価値の高い動植物・地質・鉱物など。また、地方公共団体の条例によって指定されたものも含む。:『大辞林第三版』より
※花こう岩…石英・雲母・長石などの鉱物から成る深成岩。完晶質・等粒状で、色は白っぽい。磨くと光沢が出る。御影石。:『大辞林第三版』より
※風化…地表の岩石が、日差し・空気・水・生物などの作用で、しだいに破壊されること。また、その作用。:『デジタル大辞泉』より
※たい積岩…れき・砂・泥や生物の遺骸などが流水または風などによって運ばれ沈でんたい積してできた岩石。砂岩・泥岩・石灰岩。:『とちぎの自然 地形・地質編』より
【参考文献】
- 改訂版足利の自然:足利教育委員会
- とちぎの自然 地形・地質編:栃木県
- わが郷土足利:山口照房
- 栃木県の記念物:財団法人栃木県文化振興事業団
- 足利の自然観察ハンドブック:足利市
場所 | 名草巨石群 栃木県足利市名草上町4990 |
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備考 | 駐車場:あり アクセス:生活路線バス(名草線)「入名草」下車徒歩45分 |
※この記事に掲載されている情報は取材当時(2018/02/18)のものです。お気づきの点があれば、「あしかがのこと。」編集部へお問い合わせください。
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