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足利市立美術館企画展「浮世絵にみる子どもたちの文明開化」
足利市立美術館(通2丁目)では、企画展「浮世絵にみる子どもたちの文明開化」を9月2日(日)まで、開催しています。
この企画展では、明治時代につくられた約300点の浮世絵と資料が展示されています。明治維新から150年。江戸から明治へと時代が大きく変貌を遂げるなか、特に子どもたちの「学び」、「遊ぶ」姿に着目して選ばれた浮世絵や資料を通して、文明開化によって変わりゆく社会と人々の暮らしの様子を垣間見ることができます。学芸員の福島直さんにお話をうかがいました。
浮世絵にみる新しい時代の到来
文明開化の波はまず東京の街並みから始まり、徐々に広がっていったといいます。インフラの整備から始まった変化は、服装・髪型、洋学・英語ブーム、「学問のススメ」のヒットなどを通じて、人々の意識にも波及しました。
子育てにも西洋の知識が取り入れられるようになると、「学制」が敷かれ、「寺子屋」から「学校」へと、教育は、個人的なものから公共のものへと変貌します。浮世絵もまた、西洋文化の影響を受けます。鮮やかな赤色や遠近感・影を使った表現、より写実的な描写が、明治時代の浮世絵の特徴なのだといいます。
子どもたちを見守る大人たちの存在
「子どもたちだけでなく、取り巻く大人の姿を感じてほしい」と福島さん。「子どもに関わる方、かわいいと思うすべての方が、この企画展を興味深く鑑賞できると思います。また、一緒に見に来た子どもたちも楽しめるのでは。」と話します。「子どもたちの姿を描かせたら群を抜いている」という、明治を代表する3人の絵師によって描かれた浮世絵には、当時の子どもたちが様々な「遊び」に夢中になっている姿が描かれています。その一生懸命な姿、幸せそうな表情の背後に、当時子どもたちを温かく見守っていたであろう大人の存在を感じ取ることができます。
相互に関わりあう「学び」と「遊び」
明治時代、浮世絵は初めて教育にも用いられるようになりました。学校での教材、「立身出世」を促すものなど。家庭での教育も重要とされ、現在の文部科学省にあたる「文部省」が就学前の子ども向けに発行した「文部省発行教育錦絵」まで発行されました。
学ぶための浮世絵は、見て楽しめるもの、ウィットに富んだものでもありました。
一方、子どもたちが遊びに用いた「おもちゃ絵」にも、公共のマナーや、世の中のことを学ぶことができる面があり、着せ替え、立体工作のような手先を器用に使うものもありました。「学び」と「遊び」が表裏一体となっていたのです。
幅広い世代、それぞれに楽しむ企画展
「勘のいい方は、現代そのままの暮らしに繋がっていることに気づくのでは」と福島さん。当時の子どもたちが精いっぱい学び・遊んだことが、現代の暮らしに繋がっているといえそうです。
現代の暮らしの土台となるものが、既に明治の時代、西洋の文化を取り入れたことで生まれていたことが、この企画展で実感できます。
「懐かしい…」と鑑賞する方、子どもが夢中になって遊んだおもちゃ絵が、美しい状態で保存されていることに驚く方、純粋に色鮮やかな浮世絵や資料を楽しむ方。体験コーナーで楽しむ子どもたち。幅広い世代の方が、それぞれに楽しめる企画展です。
(取材記事執筆:松村敬子、デスク:山田雅俊、校正:茂木諭子)
日時 | 2018年7月14日(土)から9月2日(日) 午前10時から午後6時(入館は午後5時30分まで)月曜日は休館日 |
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場所 | 足利市立美術館 栃木県足利市通2丁目14-7 |
備考 | 観覧料 一般700円 高校・大学生500円 中学生以下無料 ※各種障がい者手帳をご提示の方とその付添者1名は無料となります。 ※「あしかが いきいきパスポート」をお持ちの方および両毛広域都市圏内にお住まいの65歳以上の方は無料です(住所・年齢を確認できるものをご提示ください)。 ※第3日曜日「家庭の日」(7月15日、8月19日)は、中学生以下のお子さまを同伴のご家族は無料となります。 |
※この記事に掲載されている情報は取材当時(2018/08/16)のものです。お気づきの点があれば、「あしかがのこと。」編集部へお問い合わせください。
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