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大豆生田実 前足利市長に聞く 4年間の総括(前編)
先月21日に任期満了に伴う足利市長選が行われた結果、無所属新人で元朝日新聞記者の和泉聡氏(49)=自民推薦=が無所属現職の大豆生田実氏(47)を破って初当選し、今月13日より足利市新市長に就任しました。 今回の「あしかがのこと。」カバー記事では、4年間の任期を終えた前市長、大豆生田実氏に行ったインタビューの内容を掲載いたします。
任期満了間近の11日土曜日。市役所内の市長応接室で大豆生田市長(当時)にお話を伺いました。本インタビュー記事は、お話いただいた内容をできる限りそのまま掲載したものです。なお、本インタビューは今回と6月20日(木)の2回にわたり掲載します。
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――初めに先の選挙結果についての、現在の率直な感想をお聞かせください。
大豆生田氏(以下敬称略):結果については、私の不徳の致すところであり、とにかく反省しています。
――(選挙結果は)意外、ではありましたか?
大豆生田:勝つつもりで戦っていますので。。。
――敗因について、ご自身で思い当たることはありますか?
大豆生田:敗因はいろいろあって一つではないと思いますが、それぞれたどっていくと、結局は私自身、候補者本人にたどり着くと感じています。選挙全般に関して、僕自身がもっともっと取り組みを深めることができたのではないか、という思いがあります。
――選挙結果が報道されると同時に、今回の選挙では残念ながら投票率も非常に低かったという情報も流れましたが、これも敗因のひとつだとお考えになりますか?
大豆生田:僕の口からは「不徳の致すところ」ということ以外には言えません。ただ客観的に見ている人は、そういう分析もされていますね。もしそれ(投票率の低迷)が敗因のひとつなのであれば、もっと政治への関心を高めていくような地道で気の長い取り組みをしていかなければなりませんね。これは国民全体、市民全体が考えるべきことではないかな。
――今回の選挙活動の中で、一番記憶に残ったり、心に残ったりしている言葉はありますか?
大豆生田:「応援しているからがんばって」などという温かい声援が一番励みになりましたし、記憶に残っていますね。
――この4年間、特に力を入れて取り組まれたことは何ですか?
大豆生田:市役所の執務指針、会社でいえば「社是」にあたりますが、これを「まずは市民への感謝から」という言葉にし、すべての公共施設に掲げました。この意味するところは、我々公務員が日々様々な施策を実行し、また給料が頂けるのも、民間の懸命な努力により富が創出され、そこから税金を納めて頂ける部分が大きいわけですから、それを意識して仕事に当たろうという意味を込めました。
また、企業でいうところの経営方針を4つ出しました。一つ目は「選択の自由が幅広く保障されている社会を作りましょう」。二つ目は「頑張った人が正当に報われる社会を作りましょう」。三つ目は「子どもにツケを回さない社会を作りましょう」。四つ目は「利他の精神を尊べる社会を作りましょう」です。これらをもとに、市政運営に取り組み、様々な改革を重ねていきました。
――中でも具体的に、この施策に力を入れてきたということはありますか?
大豆生田:いくつもありすぎて言いきれないのですが、まず「選択の自由が幅広く保障されている社会」という部分については、入札改革をしました。ひとつにはゴミの収集業務について入札改革をしたのですが、足利の場合、ゴミ収集業務は今まで3社の随意契約で年間5億円以上の経費をかけてずっとやってきたので、高値安定で行われているだろうということは容易に想像できました。他の自治体のゴミ収集業務と比較しても高すぎるということは指摘されていたので、市長になってすぐに、入札改革を行いました。足利市内でゴミ収集業務を行っている業者は3社しかないのですが、足利のゴミ収集エリアは大きく4か所に分かれており、入札をする場合は1社で1か所を原則としましたので足利本社だけでは競争入札にならないので、足利支社や営業所にも入札参加資格を与え競争性を持たせました。結果的に年間約3億2千万円で済み、約1億8千万円もの経費を浮かせることができました。逆にいえば、これまで相当な税金が無駄になっていたとも言えるわけです。今回の選挙では、この施策について「(ゴミ収集業務の入札が)市外の業者になってしまったので、市外にお金が落ちてしまった」という指摘がありましたが、実際には本社は市外でも支店や営業所は足利市ですし、そこに勤める足利市民もいるのです。
いずれにしても、この件についての問題の核心は、競争入札を導入した結果として年間約1億8千万円も税金が浮いたということなのです。
「頑張った人が正当に報われる社会」については、役所の人事でいえば、年功序列で行われていた人事を見直しました。今までは定年近くまで勤めた人が部長になるという人事でしたが、それだけでは若い人が頑張らなくなってしまいます。頑張っても課長になれない、部長になれないということではモチベーションも上がらないので、当時課長だった松澤一廣さんを副市長に抜擢する人事を行いました。彼は課長としての評価が非常に高く、そういう人事をすることによって、組織にいい刺激を与えることができたのです。
「子どもにツケを回さない社会」というのは、行政改革により歳出をいかに効率良くしていくか、そして知恵を出して歳入をいかに確保していくか、ということを心がけるということです。行政改革については、事業仕分けや、7つの民営化をするということで歳出を効率良くしました。市税の基幹税というのはいわゆる市民税と固定資産税ですが、人口が減り、土地の評価額が下がっているのですから、当然このふたつは減ってしまいます。そのような状況の中でいかに歳入を確保するかを考えた時には、やはり知恵を出さなければいけない。たとえば競馬場跡地の調剤薬局からの年間の家賃収入が約1億2200万円にもなったという施策があります。これは僕だけの知恵ではなく、市の職員や関係者の方と一緒に出した知恵で、すごくいい成果を出せたと思っています。
「利他の精神を尊べる社会」。「利他」というのは天台宗の忘己利他(もうこりた)からとった言葉で、「己を忘れて他人を利する」という意味です。人一倍公共心が強い、そういう人が公務員になっているのですから、「利他の精神」を改めて意識して職務にあたってほしいという思いでこの項目を掲げました。足利学校とゆかりの深い論語でいえば「恕(じょ)」の精神ということになります。これは「思いやり」という意味です。
これら4つの経営方針に基づいて各々の施策を進めてきましたが、その後東日本大震災が発災をして、日本のエネルギー問題がクローズアップされるようになりました。自治体として何ができるのかを考えた時に、僕と職員と足工大の牛山学長、官僚OBの方々、シンクタンクの方々たちと議論をして「足利市民総発電所構想」という構想を昨年の4月に発表し、取り組みを進めてきました。これは「創電・節電・蓄電」という3つをキーワードにして取り組みを進めることで、簡潔に申し上げるならば、足利市民の方々が支払っている電気料金を他の自治体と比べて安くしよう、という考え方なのです。具体的な取り組みは多岐にわたっていますが、たとえば「創電」でいうと公共施設の屋根を太陽光発電事業者に貸し出して賃料収入を得る「屋根貸し」事業を全国に先駆けて足利市が始めましたし、「節電」ではBEMSというビルの消費電力を制御するシステムを公共施設に導入することで節電を促したり、といったことを行いました。将来的には地産池消で電気を使えるように市内に発電所を作ることができればという施策もあたためていましたし、まだまだこれから新しいメニューも加えていく予定でした。
――「足利市民総発電所構想」については、市長が実施してきた施策の中でも新市長にぜひとも引き継いで欲しい施策、ということでしょうか?
大豆生田:5月7日に新市長へ約100項目の引き継ぎをしたのですが、その中の3つを取り出して、10日の退任式の時に申し上げました。「足利市民総発電所構想」はこの3つのうちのひとつです。もうひとつは「足利学校参観者倍増計画」、あとひとつが「中橋の架け替え」です。
「足利学校参観者倍増計画」についてですが、市街地のシャッター通りの活性化はどの自治体も苦労している問題です。足利市の場合は幸い市街地内に「足利学校」と「鑁阿寺」があるので、これをうまく活用しない手はありません。さらに足利学校は足利市の所有物なので、足利市が活動に注力できる観光名所ですから、足利学校の参観者を倍に増やそうという「足利学校参観者倍増計画」を立てました。平成23年の参観者数である約16万をベースに毎年10%ずつ増やしていき、8年後には倍の32万人にしようという意欲的な計画で、今年で2年目です。1年目はこの10%以上をクリアしていて、2年目の今年も5月6日までの数字で言えば参観者数は昨年を1万人以上上回り、非常にいいペースです。まだまだ道半ばなので、ぜひ引き続き取り組みをお願いしたいと思っています。
「中橋の架け替え」は、ゲリラ豪雨などの災害ニュースや東日本大震災後の防災意識の高まりを考えれば、市民の生命と財産を守る責務がある政治家が放置してはいけない問題です。これまで、地元説明会にも参加し、国や県との協議会も設立して架け替えに向けた準備を進めてきました。2期目はこれを加速させてしっかりと対策を加速させなければと思っていたので、これも引き続きお願いをしたいと思っています。
(聞き手:「あしかがのこと。」編集長:茂木、写真撮影:「あしかがのこと。」記者:山田)
~インタビュー前半終了。後半はこちらからどうぞ。~
※この記事に掲載されている情報は取材当時(2013/05/16)のものです。お気づきの点があれば、「あしかがのこと。」編集部へお問い合わせください。
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