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論語と足利学校
「子曰、学而時習之、不亦説乎」
子曰く(しいわく)、学びて時に之を習う、また説ばし(よろこばし)からずや。
という一節を読んで、「論語」や「孔子」という単語がすぐに頭に浮かぶ方は、中学校の授業をまじめに受けていた方や読書家の方かもしれません。
先に紹介したのは論語の冒頭に出てくる一説で、数ある論語の教えの中でも特に有名な一節でもあります。
しかしながら多くの人にとっては、「聞き覚えがある」程度でしか知らない論語。
この論語と、足利が誇るべき文化財の足利学校は孔子像が安置されていることからもわかるように深い関係があるのですが、では実際にどんな関係が…? と聞かれると、意外と知らない人も多いのではないでしょうか(恥ずかしながら、私もその一人でした…^^;)。
そんな人にぜひ足を運んでほしいのが、現在足利市立美術館で開催中の企画展、「論語と足利学校」です。
企画展が開催されるにあたり、足利テレビでは館長の大澤氏をゲストに招き、本企画展についてのインタビューが行われました。
※インタビュー動画はこちらからご覧ください。
インタビューの内容は動画に譲りますが、大澤館長のお話はとてもわかりやすくて話を聞くだけで論語についての興味と親密さがググッと高まるので、ここで少しだけご紹介を。
たとえば、いつもはジッと見つめるも何が書いてあるのかよくわからなくてすぐにその場を去ってしまうことの多い写本の展示。
今回の企画展でも複数の貴重な写本が展示されていますが、その中のひとつが「論語義疏(ろんごぎそ)」という写本です。
この本は室町時代に書き写されたものだそうですが、ここに書き写された内容が非常に貴重なものだということで、江戸時代になって根本遜志によって論語の故郷である中国に逆輸入された…という、稀有な歴史を持っているそう。
あえてたとえれば、イタリアのあるおいしいパスタのレシピが本国では廃れてしまったのに、それが日本に残っていて、そのレシピがイタリアに逆輸入されパスタの味が復活した…というようなイメージでしょうか。
写本の「逆輸入」とはそれほど珍しく、貴重な例であるのです。
論語が広く学ばれていた時代はもちろんコピー機などないので、学びの第一歩は原本を書き写し自分自身の教科書を作ることから始まるとのこと。
つまり「写本」という行為は学びに欠かせないものだったわけですが、もちろん学びはそれだけで完結するわけではなく、写本の中には赤字の書き込みや個人のメモなどその人が学びを深めていった痕跡がありありと見受けられ、これも原本を鑑賞する際の一つの見どころではないでしょうか。
写本を見れば、古人が非常に勉強熱心だった様子も伺えます。
「論語」と聞くと「なんだか難しそう…」というイメージが先に立ってしまいますが、館長のお話を聞くと、論語というのは昔の人が今の受験生と同じように様々な思いを抱きながら勉強した「教科書」であり、現在の私たちも同じように「勉強」していけば決して理解不可能なものではない…思えてきます。
インタビュー動画の中では、考古学がご専門という大澤館長の意外な経歴についても触れられているので、美術館に行かれる方は動画をご覧になってからいかれると、さらに深い視点で展示を眺められるのではないでしょうか。
今回の企画展の他、足利では日曜日の論語の素読会や足利学校アカデミーなど、この土地ならではの論語に親しむ催しが数多くあります。
この企画展をきっかけに、論語の世界へ足を踏み入れてみるのもよいかもしれませんね。
■論語と足利学校
2013年4月13日(土)~5月12日(日)
開館時間:午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
観覧料:一般600(480)円/大学・高校生400(320)円/中学生以下無料
※この記事に掲載されている情報は取材当時(2013/05/02)のものです。お気づきの点があれば、「あしかがのこと。」編集部へお問い合わせください。
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satoko motegi
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