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じんわり木と漆のぬくもりが伝わる「漆工房の店 くぼた」のうつわ
「足利には気になるお店がある」と、ある人が話していた。知人へ送るプレゼントを探していた時、その話をふと思い出した。そこは日本最古の学校としても知られる足利学校跡の西側にあり、小京都とも称されるこの界隈の雰囲気にぴったりな和風のお店である。裏はもと蔵屋敷であったのか古さの中に現代的でモダンな印象を受ける。ショーウインドーには「うるし」と書かれた文字。木の格子窓からは、商品が品よく置かれた店内の様子が見える。入口が奥まったところにあり、手前には白地に黒字で書かれた「くぼた」ののれんがかかっている。
作り手の顔が見えるお店
「くぼた」では、漆作家・窪田(くぼた)直(なお)弘(ひろ)(くぼた なおひろ)さんの工房「直悦庵 漆工房」で作られたうつわを展示、販売しており、他にもお店を任されている奥様の香(か)和(より)(かより)さんがセレクトした作家の作品も一緒に並んでいる。
お店でありつつ、ギャラリー的な要素も兼ね備えた空間を作りたいというコンセプトのもと、大量生産ではなく、作り手の顔が見える物を少しずつ置き、衣・食・住の提案をしている。お客様の気が向いた時にふらっと来てほしいと思い、お店を始めて10年が経つ。
お店に置かれている作品は、窪田さんの学生時代からの友人や、展示会で知り合いになった作家の物などさまざま。セレクトは全て香和さんが行っている。香和さんは「選ぶときには漆と合わせてもしっくりくるもの、売れる物より好きな物を重視している。どの作家さんの作品も使えば使うほどお気に入り度が増していく。私自身もここにいると作品に癒されるんです。」と話す。お店には毎月来店する常連さんはもちろんのこと、一年に一度の常連さんもいる。香和さんはそんな年に一度の常連さんも大事にしている。
埼玉、群馬を経て足利にたどり着いたうつわ
もともと窪田さんは、埼玉県春日部市出身。高崎芸術短期大学美術学科グラフィックデザイン科を卒業し、セツ クラフトファーニチャー及び浩悦庵漆芸工房 野村浩氏に師事、1998年群馬県妙義町で独立し、直悦庵 漆芸工房設立。2005年、香和さんの地元でもある足利に「漆工房の店 くぼた」を開店した。
足利でお店を開いた理由を伺うと、「足利の独特の雰囲気といろんな加減がちょうどよくて、お店を出すならここと決めていた」と話してくれた。窪田さんの器は、「『木と漆』といういきものの力を借りて、使いやすく丈夫で、使っていてほっとできるうつわを、丁寧につくりたい」という思いでできている。
漆の器と聞くと、高価で普段使いできない特別な物と思いがちだからこそ、毎日使って日々変わってゆく器の変化を味わうのも一つの楽しみ方だ。実際に窪田さんの器を手に取ってみると、手の中に木と漆のぬくもりが伝わってくる。軽くて丈夫、使い込んでいくうちに艶が出てきて、木目がはっきりと見えてくる。小さなキズもつくが、それも財産となる。これから目指すことは、ずっとここにあり続けること。今日も窪田さんは漆と向き合い、香和さんはお店に立つ。(取材・記事執筆 鶴淵亜希)
《店舗情報》
営業時間:10:30~18:00
定休日:水・第3火曜日
住所:〒326-0813 栃木県足利市昌平町2365
電話番号:0284-44-0767
※この記事に掲載されている情報は取材当時(2016/02/29)のものです。お気づきの点があれば、「あしかがのこと。」編集部へお問い合わせください。
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