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43年変わらない看板の文字「モカ」自家焙煎コーヒー店
1974年の創業当時から変わらない、赤い看板のコーヒー店がある。人の手により欠点のある豆を徹底的に取り除く、“ハンドピック”を経たコーヒーを提供している「モカ自家焙煎コーヒー店」は、現在親子二代で営まれている。
二代目の堀越敬介さんは「赤ちゃんの頃から、お客さんに可愛がってもらって大きくなった。自分の家よりも店で過ごす時間の方が長かったから、ここが実家みたいなんです。」と話す。そんな場所がなくなるのは嫌だという想いで、店を手伝うようになった敬介さん。弟の大介さんも店に立ち、親子3人でカウンターに並ぶその店内はジャズが流れ、手書きのメニューがテーブルに置かれている。
店のシンボルはフリーハンドの即席看板
敬介さんのお父さんでモカ創業者の俊匡さんは、美術系の大学を卒業後、広告関係の仕事から脱サラして43年前にコーヒー店を始めた。手書きのメニューや、今や店のシンボルである看板は、前職での経験を活かして俊匡さんがデザインしたもの。一見すると「モメ」とも「モナ」とも読めてしまうその看板が生まれたときの話を聞いた。ある日、常連の鉄骨屋さんと看板を作ろうということになり、型になる文字のデザインを紙で切って欲しい、と言われた。金属を切ってもらうのだからできるだけ簡単な方がいいだろうと思った俊匡さんは、その場でカタカナ2文字を新聞紙にフリーハンドで切り取り、渡した。それがそのままデザインされて、翌日には看板が出来上がったのだという。
風が強い日に見ることができる看板!?
創業以来、店と共に長年愛されてきた看板が、たった2日で作られていたことは驚きだった。ときには学生達になんと読むのかと話題にしてもらえ、芸術的だと言ってくれる人もいる。店に関心を持ってくれるきっかけになれば嬉しい、と俊匡さんは話す。実はそんな印象的な看板の他に、もうひとつ創業時から長い歴史を持つ看板があるというのだ。それは杉の木でできた軽くてコンパクトなもの。木製の看板は、強風の日に大きく揺れる金属製看板で事故が起こらないように作られたという。俊匡さんの手書きで「モカコーヒー」と書いてある木目の看板が持つ雰囲気は、通常の看板とはまた違う印象だ。
「おかえりなさい。」看板とともにお客さんをお迎えしたい
足利を離れた人が帰省したとき店に足を運んでくれ、店の雰囲気、そしてずっと変わらない看板を懐かしんでくれるという。「そんなお客さんを、おかえりなさい、という気持ちで迎えています。」と話す敬介さん。「店に入ってきたお客さんが今、どんなコーヒーを望んでいるか、伝わってくるものを感じなさい。」というのがお父さんの教え。天気によっても変わるコーヒーの味は、形がないものだから正解があるわけではない。店に立って20年経った今でも、コーヒーには発見があるのだとか。
繋がれていく「モカ」のこれから
かつて自分がそうだったように敬介さんの子供たちも今、店に遊びに来ることがあり、お客さんにも可愛がってもらっているのだという。店内には、絵画教室に通っているという子供たちの絵も飾られ、ご家族に大切にされているお子さん達の姿が見えるようだった。「自分の子供も、できるだけいろんな人に手をかけてもらって育っていくといいなと思っています。」と敬介さん。次の世代の子たちもまた、この店で愛され、一緒に歴史を繋いでいく。(記事執筆:田嶋美歩、デスク:山田雅俊、校正:茂木諭子)
場所 | 自家焙煎コーヒー店 モカコーヒー 栃木県足利市伊勢町3-9-9 |
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備考 | 電話番号 0284-42-9608 営業時間 AM9:00~PM9:00 木曜定休 駐車場 あり |
※この記事に掲載されている情報は取材当時(2017/01/23)のものです。お気づきの点があれば、「あしかがのこと。」編集部へお問い合わせください。
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田嶋美歩
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