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映画「ハローグッバイ」 菊地健雄監督インタビュー
足利出身の菊地健雄監督作品「ハローグッバイ」が、7月より上映がスタートし、9月9日から足利市大月町にある映画館「ユナイテッド・シネマ アシコタウンあしかが」で公開されます。この作品は、足利出身である菊地健雄監督の長編監督第2作目。公開に先駆け、菊地監督にインタビューしました。菊地監督は9月9日に「ユナイテッド・シネマ アシコタウンあしかが」で舞台挨拶を行う予定です。
インタビューワー あしかがのこと。記者 早川雅裕(以下、早川):「ハローグッバイ」を東京映画祭で2回見ました。前作の「ディアーディアー」と比べるとギャップを感じ、監督の土俵の広さを感じました。助監督として、いろんな監督についてきた経験でしょうか。
菊地健雄監督(以下敬称略):そうですね。それは一番大きいですね。そして、僕自身、ある特定のジャンルの映画だけが好きというわけでなく、色んなジャンルの映画が好きなのです。だから現場ではなるべく、ある方向性だけという風には決めつけたくありません。色んな作品にチャレンジしてみたいと思っています。そういう意味で二本目として、いいチャレンジをさせていただけました。
早川:監督は男子校出身ですよね?女子高生2人の心の葛藤を撮るにあたって、女子高生へかなり取材されたんですか。
菊地:はい、久保田さんが現役女子高生でしたし、萩原さんも現役に近い年代だったこともあり、撮影前に主演の2人やクラスメイト役の俳優さん達の声を聞きました。本人たちの、役者としてではなく、学校などプライベートの時間にまつわることを聞くことができたのは大きかったですね。他にも一般の女子高校生にも取材して、今の女子高生のライフスタイルがどうなっているのかを聞くことができ、そのあたりを手掛かりにしました。
早川:現役女子高生に聞いたとはいえ、素晴らしい演出でした。
菊地:やっている本人たちが、そのままお芝居していることが大きい。彼女たちが女優さんとして、1人の女の子として、等身大の部分がうまく出てくれば、自然とこういうことになるんじゃないかという構想はありました。僕が演出で引き出したというより、本人たちが自分と切り離せないところで、カメラの前に立てたことが大きかったのだと思います。僕はあくまでお膳立てをしただけです。
早川:もたいさん演じるおばあさんと会うことで、化学反応で心が変わって動いていくところがすごくいい。ああいうことって、女子高生だけでなく、我々も、色んな人と出会って、変わっていくことを再確認しました。
菊地:男子校・女子校に関わらず、学生時代は誰しも、学校の中で過ごす時間が1番ウェイトを占めてますよね。そのなかの人間関係で悩んだり、それが楽しかったり。自分は、小中学校のころに、ボーイスカウトをやっていて、他校の子と仲良くなれたことや、足利市と姉妹都市であるスプリングフィールド(イリノイ州/アメリカ)に行かせてもらったことで、自分にとっては学校だけが世界じゃないと気づくきっかけになりました。今回、この企画のお話を頂いた時、最初は学校の中で色々なことがおこる2人の女子高生の話でした、彼女たちにもう少しだけ外に出て欲しいというか、もう少しだけ遠くに行かせるためにはどうしたらいいかっていうところで悩みました。
もたいまさこさん演じるおばあさんを2人の間に入れてみたら、単に学校の中だけでなく、様々な世代が登場する話に転がりました。
企画の段階では、2人の女子高生が出てくる話であれば、自由にやってもらってかまわないということではありましたが、プロデューサーや脚本家と時間を掛けてアイデアを出し合ってい来ました。企画は毎回苦戦します。
早川:音楽もいい。この映画ありきでできた曲なのでしょうか
菊地:はい。最初のオーダーで、女子高生2人の話、かつ音楽を絡めて欲しいということだったので、音楽担当の渡辺シュンスケさんにかなり早い段階から参加してもらいました。その中で、渡辺さんには話を作っていく中で、出演もしていただこうという話になりました。おばあさんの口ずさんでいる曲がシナリオで出てきていたので、早い段階から渡辺さんとキャッチボールして作っていただきました。
早川:音楽が物語の鍵になっていると感じました。監督にとって音楽って、大事な要素かなと。
菊地:大事な1つの要素ですね。音楽が好きなので、いいかたちで、映像と絡ませたいと考えています。セリフの響きだったり、環境音だったり、映画音楽だったりが、どういうバランスで、どう入ってくるかはすごく毎回気になります。割と細やかにやりますね。観る人の意識を邪魔してしまわないように音楽が前に出すぎてもいけない。ちぐはぐなものであってもいけない。どういったものがいいのかすごく悩みます。何度もやり直してもらいました。渡辺さんは今回、映画音楽初挑戦でしたが、初めてとは思えないくらいやり取りしやすかったですね。同年代なのもあって、聞いてきた音楽も一緒で、渡辺さんとの仕事は楽しかったです。
早川:今回の映画をみて、本当に、菊地監督がすごいと思いました。遠いところへいっちゃった・・・と思ってしまいました。
菊地:「ディアーディアー」はデビュー作で、自分が自分の中でやりたいと思うことを、とにかくぶつけるのが大きなテーマでした。映画の舞台が足利っていうこともあって、自分に近いところに題材がありました。でも長年助監督もやってきましたし、職人としての映画監督じゃないですけど、全部自分のテーマで今後も映画をつくっていこうとは思ってなくて。今回は、「ディアーディアー」とは違う角度で映画をつくっています。与えられたテーマや、全部が自分発信ではない中での作り方というのを、今回は試行錯誤できたかなと思います。
場所 | ユナイテッド・シネマ アシコタウンあしかが 栃木県足利市大月町3−2 |
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備考 | 渋谷ユーロスペース他全国順次公開 公式サイト 出演: 萩原みのり 久保田紗友 渡辺シュンスケ 渡辺真起子 小笠原海(超特急) 岡本夏美 松永ミチル 望月瑠菜 桐生コウジ 池田良 川瀬陽太 / 木野花 もたいまさこ 日本映画スプラッシュ部門公式出展作品 監督:菊地健雄|脚本:加藤綾子|音楽・主題曲:渡辺シュンスケ(Schroeder-Headz) 企画・プロデュース:内田わか|プロデューサー:平林勉 撮影:佐々木靖之|照明:山本浩資|録音:高田伸也|美術:安藤真人|装飾:龍田哲児| スタイリスト:阪上秀平|ヘアメイク:有路涼子|助監督:張元香織|制作担当:熊谷悠|編集:山崎梓 製作:Sony Music Artists Inc.|配給:アンプラグド |
※この記事に掲載されている情報は取材当時(2017/09/07)のものです。お気づきの点があれば、「あしかがのこと。」編集部へお問い合わせください。
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早川 雅裕
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