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織物の模様のような石がある名勝地。足利市にある「物外軒庭園」
「物外軒庭園」は、足利市通6丁目にある織姫公民館の北側に位置しています。2008年に国登録記念物(名勝地)に指定されました。足利市指定文化財の茶室と国登録記念物の庭園があり、一般公開されるのは4〜5月と10〜11月の土日・祝日、6月の第2日曜日のみ。秋の文化財一斉公開の日には、夜間特別公開で紅葉のライトアップも行われます。
足利市民でも知る人ぞ知る庭園
庭を委託管理する足利庭園文化研究会の代表、外丸実さんは「足利市民でも、この庭園の存在を知らない人が多い」と話します。取材時に庭園を参観していた70歳男性は「50年間足利に住んでいて今日、初めて来た」とのことでした。春は山野草や新緑が美しく、秋は紅葉が楽しめる、日本庭園。珍しい野鳥の巣もあることから、カメラ片手に県外から訪れる人も多いそうです。
庭園内に一個だけある織物の模様のような石
庭園内の石は、足利市中心部を流れる渡良瀬川で採れた川原石など地元の石を数多く使用しています。なかでも更紗石と呼ばれる石は、織物の更紗模様に似ていることから、明治から昭和に珍重された石です。「織物で栄えた足利だからこそ、この石を庭に置くことが流行したのではないか」と外丸さんは考えます。実際に、市内の古い商家の邸宅にも同じ更紗石が置かれています。この更紗石は、水をかけると赤と白の模様がはっきりと浮かび上がります。まるで霜降りの牛肉のようです。
2つの庭が織りなす庭園
物外軒の庭園は、北側の池のある庭と南側の茶室のある庭で構成されています。北側の庭は、そこに住んでいた柳田家の庭として作られたものでした。縁起の良い「鶴と亀」に見立てた島があり、太陽の光を感じる明るい庭園となっています。対して南側の庭は、市内猿田町の屋敷にあった客人をもてなすための茶室と一緒に移されたもの。苔むした庭で、落ち着いた佇まいを見せています。それぞれ異なった2つの性質の庭が、バランス良く調和しているのがこの庭園の特徴です。
消失していく古い庭園を守りたい
足利は、古くは鎌倉時代から庭園を造園していたそうです。明治から昭和にかけて作られた庭園は、物外軒を含め、現在まで数多く残されています。それは「先祖の残したものを受け継ぎ、守っていこうという家が多かったから」と外丸さんは言います。しかし、生活スタイルの変化や時代の流れに伴って「昔の庭に価値を見いだす人が減ってきた」と外丸さんは感じるそうです。「世代交代や地震などでいくつもの庭園が消えていく今、たくさんの人に物外軒の庭園を楽しんで欲しい」と外丸さんは話してくれました。
※国登録記念物…芸術上または観賞上価値の高い重要なものを、国が登録地として指定し、保護を図っている。
※更紗石…両毛地域での名称。足利市や佐野市、群馬県桐生市などで産出されるチャート(体積岩)。京都の紅賀茂石や、佐渡の赤玉石は同じ石。
【参考文献】
近代の庭園・公園等に関する調査研究報告書(文化庁ホームページ)http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/teien_koen_chosa.html
下野新聞:足利庭園文化(1)〜(12)(2016年1月〜3月)
場所 | 物外軒 栃木県足利市通6丁目3165番地2 |
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備考 | 公開:4、5、10、11月の土・日曜日、祝日、6月第2日曜日 参観料は無料 時間:午前9時〜午後4時 駐車場:織姫公民館またはさいこうふれあいセンターをご利用ください |
※この記事に掲載されている情報は取材当時(2017/11/10)のものです。お気づきの点があれば、「あしかがのこと。」編集部へお問い合わせください。
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尾﨑 佳代子
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